花菱立涌紋様に鳳凰孔雀の黒引き振袖【fuh01】

はじめてこのきものを目にした時、圧倒されたことを今でも覚えています。ほぼ全面が手描き、手刺繍で埋め尽くされ、地の色の見当がつかないほどです。これだけの柄が施されながらも、重厚さと落ち着きを保っているのは、地色が黒だからこそでしょう。大正から昭和初期に仕立てられた、古典的な輝きに満ちた作品です。

花菱立湧紋様に菊や梅などの古典的な花と、上前には鳳凰、後裾には鶴、右肩には孔雀が大胆に手描き、手刺繍された、華やかなアンティーク黒振袖です。「垂れ蔦」の五つ紋が入っています。全体的には手刺繍ですが、金泥・銀泥（きんでい・ぎんでい）が施されているところもあります。長い時間が経つと割れてしまうこともある繊細な金泥・銀泥ですので、これまで大切に丁寧に扱ってまいりました。

比翼の裾回し部分も同じ模様が描かれています。「とと姉ちゃん」の撮影時には白い比翼をつけたのですが、赤い比翼をつけたいとおっしゃるお客さまもいらっしゃいますよ。

帯は、オフホワイトの地に、亀甲、花菱、花丸紋様が施されたアンティークの丸帯です。時代も同じく大正から昭和初期の作品です。

後姿の右肩に見事な孔雀が描かれていますが、この孔雀を際立たせるためには、着付けの工夫が必要です。帯の結び方によっては隠れてしまうので、左と右に下がるような立て矢などに結びます。逆の立て矢だと、孔雀が隠れてしまいます。「とと姉ちゃん」では、左立て矢に結びました。

成人式、結婚式など、晴れの舞台に是非お召しになってください。