深緋色のぼかし辻が花の振袖【fui05】

これほど見事な振袖を召された方は、成人式の会場にもいらっしゃらないでしょう。まさに紅一点といえます。金糸、銀糸が織りこまれた朱色の生地に、「辻が花」が手描きされた現代物の振袖です。裾の文様に加え、袖口から袂に描かれた枝垂れが、誠に優美です。

このきものは、金沢の方から、まだ仮縫いの仮絵羽（かりえば）の状態で譲り受けました。これほどの「辻が花」は、是非、素敵なお嬢さまにお召しいただきたいと思い、ゆめやの和裁士さんに仕立ててもらいました。

仮絵羽の状態から正式に仕立てる際には、仕付けを一度解いて「湯のし」をしてから仕立てます。その際には胴裏と裾回しと呼ばれる生地が必要になります。その生地に辻が花を手描きして、染めを何度も入れながら完成させていきます。とても手間のかかる仕事です。根気よく仕上げてくれた和裁士さんに感謝です。

このきものは「一竹辻が花」ではありませんが、山梨県川口湖には、一竹美術館という素晴らしい美術館があり、故久保田一竹さんの素晴らしい作品が展示されています。是非一度ご覧になってください。心が洗われるようですよ。

帯には同じく、辻が花のグレーの袋帯を合わせました。きものと帯が一体となって、とても素敵です。晴れの日にぜひお召しになってください。