【プロ監修】レトロの着物の魅力って?アンティーク着物との違いは?
はじめに
日本の伝統文化の象徴である着物。その美しさと独特の魅力で、現代に至るまで多くの人を魅了し続けてきました。中でも「レトロ着物」と呼ばれるものは、過去の時代の美学を現代に伝える貴重な存在となっています。
今回の記事では、そんなレトロ着物の世界に深く潜り込み、その魅力や特徴などをお伝えしていきます。着物初心者の方から長年の着物愛好家の方まで、レトロスタイルが提供する無限の楽しみ方をご紹介します。
レトロ着物の魅力に迫る
レトロ着物の最大の魅力は、時代の美意識を反映したデザインにあります。
大正ロマンの名とともに語られる時代は、西洋文化の影響を日本独自の伝統に融合させた独特のスタイルを生み出しました。その結果、モダンでありながらどこか懐かしさを感じさせるようなデザインが多く生まれ、そうしたレトロチックなデザインが今日に至るまで多くの人々を魅了し続けています。
色合いが柔らかく繊細な柄が特徴のレトロ着物は、素材の質感を活かした手仕事の美しさが際立っています。
アンティーク着物とは?
レトロ着物とは別に、「アンティーク着物」という言葉もあります。アンティーク着物は文字通り着物自体が作られた時代が古いものを指し、一般的には昭和初期以前に仕立てられたものをいいます(その点レトロ着物は必ずしも着物の製造自体が古いわけではなく、昔懐かしい柄を使用して最近仕立てられた着物もレトロ着物と呼ばれます)。
アンティーク着物には製造されたその時代ごとに異なる文化やファッションが色濃く反映されており、歴史的価値も非常に高いものといえます。素材としては時代ごとに木綿や正絹の縮緬、レーヨン素材の人絹や麻などが用いられており、いずれにしても長い時間をかけて熟練の職人によって一点一点手作りされたものです。
アンティーク着物もレトロ着物と同様、着用することで過去の時代の美意識を今に伝えることができるため、着物コレクターやファッション愛好家から高い評価を受けています。
爽やかな水色の水面に波が打ち、扇や花々が手描き・手刺繍された、アンティークの五つ紋付色振袖です。扇・牡丹・菊・橘などの絵柄に手刺繍や金駒刺繍がほどこされています。帯は着物コレクターの池田重子先生から譲り受けた丸帯にいたしました。ベージュ地に龍や鳳凰が織り出されています。絞りの帯揚げは着物の色にすんなりとなじませ、帯締めは淡い色の曲線が多い帯の柄の上で、引き締め効果のある濃い色の市松にしました。
着物初心者でも楽しめるレトロスタイル
レトロ着物は、その手軽さから着物初心者にもおすすめの選択肢となります。
アンティーク着物は着物自体に年季が入りその時代特有のサイズ感などがあるため初めて着物を着る方には少々ハードルが高いかもしれませんが、レトロ着物なら着物初心者でも通常の着物と変わらない労力で着こなすことができ、それでいて着物ならではの魅力も十分に楽しむことができます。
レトロ着物を選ぶ際のポイントとして、まずは自分の好みの色や柄を見つけることから始めましょう。さらにそこに合わせる帯や和装小物をセンス良く選ぶことで、自分だけの個性的なコーディネートの完成です。レトロ着物はセットで購入あるいはレンタル利用することも可能で、セットには着付けの際に必要な小物も一式揃っているため、そうしたセット商品を選べば初心者でも手軽に着物の醍醐味を味わうことができます。
レトロ着物の選び方
レトロ着物を選ぶ際は、色柄の魅力や予算などに応じた選択が求められます。レトロ着物は大正ロマンや昭和初期の意匠を汲んだ独特のデザインが特徴で、着物それぞれに独自の個性があります。
ここでは、着物初心者でも迷わずご自身に合ったレトロ着物を見つけられるような具体的なアドバイスをしてみたいと思います。
色や柄で選ぶポイント
レトロ着物選びにおける最大の楽しみは、色や柄を選ぶことではないでしょうか。大正ロマンを彷彿とさせる鮮やかな色彩や、落ち着いた色合いの着物などから、自分の好みや着用シーンなどに合わせて自由に選びましょう。色や柄を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 色: 明るい色は華やかさを、暗い色は落ち着いた印象をそれぞれ演出します。ご自身の好みはもちろん、着用シーンや季節、自分の肌の色味なども合わせて考えてみましょう。
- 柄: 柄の大きさは着物の印象を大きく左右します。大きな柄は存在感があり、小さな柄は上品さを演出します。柄の背景にある意味や歴史なども調べてみると、着物選びが一層楽しくなります。
色や柄を選ぶ際は、自分のライフスタイルや着る場面なども考慮するとよいでしょう。
購入予算別、レトロ着物の選び方
思い切ってレトロ着物を購入する場合、予算面も非常に大切な要素となります。特にアンティーク着物である場合は、その状態や素材、希少性によって価格が異なってきます。あくまでも参考程度ですが、初心者の方は以下のように予算別でイメージしてみるとよいでしょう。
- エントリーレベル: 2万円から5万円程度。基本的なデザインのレトロ着物から始められる価格帯です。
- ミドルレンジ: 5万円から10万円程度。質の高い素材や繊細なデザインの着物を選ぶならこの辺りになります。
- ハイエンド: 10万円以上。非常に高品質で希少価値の高いアンティーク着物がこの価格帯になります。
予算に応じた選択をすることで、後悔のない着物を買い求めることが可能となります。
レトロ着物はその美しさと特別な存在感で、あなたの和装ライフを豊かに彩ってくれます。色や柄だけでなく予算も考慮に入れながら、自分にぴったりの一着を見つけましょう。
レトロ着物のコーディネート術
レトロ着物の魅力を最大限に引き出すコーディネートは、シーンに応じた着物の選び方、合わせる和装小物選びによって生み出されます。独特の色彩と柄で、大正ロマンから昭和初期の雰囲気を現代に蘇らせるレトロ着物。ここではそんなレトロ着物の魅力をより際立たせるコーディネート術をご紹介します。
シーン別コーディネート例
レトロ着物のコーディネートは、着用するシーンによって異なります。
例えばカジュアルな集まりには、シンプルな小紋や紬に自然な色合いの帯でまとめて。フォーマルなお祝いの場なら豪華な模様の振袖や訪問着を選び、華やかな帯締めや帯揚げでアクセントを加えて。など、場面によって選ぶものを変えることを意識しましょう。
着物に合わせる和装小物
レトロ着物スタイルを完成させるには、適切な和装小物選びも欠かせません。帯締めや帯揚げは、コーディネートに色のアクセントや全体としての統一感をもたらしてくれます。羽織やショールは防寒や季節感の演出だけでなく、スタイルに奥行きも加えてくれます。
以下、コーディネートにおすすめの和装小物を一例としてご紹介します。
- 帯締め・帯揚げ: コーディネートのアクセントに。色の組み合わせで季節感も演出。
- 羽織・ショール: 気温や季節に応じて。面積のあるアイテムなので、素材によっても印象が変わってきます。
- バッグ・草履: 着物や帯の色と対比して調和する選び方がポイントです。
コーディネートに工夫を凝らすことで、レトロ着物を現代の生活場面においてもセンス良く楽しむことができます。ご自身の個性も反映させたレトロ着物のスタイルで、周りとは一味違う和装美を表現しましょう。
レトロ着物をレンタルするか、購入するか
世間でもレトロ着物に対する関心が高まっている中、こうした着物を日常や特別なイベントにどう取り入れるか、どこまで楽しむかという意味で、「レンタル」と「購入」という選択肢が立ちはだかります。
両者のいずれを選ぶかは、レトロ着物をどの程度の頻度で着るか、予算はいくらか、そして着物への情熱の度合いはどうかなどによって異なってきます。購入する場合の予算感は先ほどご紹介した通りです。
ここでは、レトロ着物をレンタルする場合・購入する場合それぞれのメリットと注意点、そしてその二択を検討する際のポイントについて細かく解説します。
レンタルと購入、どちらがおすすめ?
レトロ着物を楽しむ際に決めなければならない、レンタルと購入の二択。レンタルは一度きりのイベントや写真撮影など、短期間での着用に適しています。対する購入は長期にわたり何度も着用したい、またはコレクションとして所有したいという方におすすめです。
下記の比較表で、レンタルと購入の主な違いを見てみましょう。
項目 | レンタル | 購入 |
コスト | 一時的な使用でコストパフォーマンスが良い | 初期費用は高いが、長期的にはコスト効率が良い |
選択肢 | 多種多様なデザインから選べる | 自分の好みやサイズに合わせて選べる |
カスタマイズ | 着物のカスタマイズの幅は限定的 | 自由にアレンジや仕立て直しが可能 |
保管・管理 | 必要なし | 適切な保管とメンテナンスが必要 |
感情的価値 | 一度きりの使用なので低め | 着物への愛着が湧く |
レトロ着物をレンタルする場合のポイント
レトロ着物をレンタルで入手する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 信頼できるレンタル店選び: 安心してレンタルできる評判の良い店舗を選びます。口コミなども確認してみるとよいでしょう。
- 試着: サイズ感やフィット感が自分に合っているかは、実際に試着してみないとはっきりとは分かりません。
- レンタル期間と価格: 必要な期間を計算し、予算内で最適なプランを選びます。
- 返却条件の確認: 着用後はどのように返却するか、クリーニングの必要性などを事前に確認しておきましょう。
自由な大きさのカラフルなダイヤ柄がほどこされた正絹地に、モノクロの菊紋様が描かれたアンティーク小振袖です。たいへんインパクトが強く、斬新なデザインと配色の一品です。帯は全体を引き締めるように黒の正絹を結びました。黒地に浮かぶ花や葉が鮮やかです。重ね衿も同じ黒で引き締め、帯留めは漆工芸の螺鈿(らでん)を留めました。
レトロ着物を購入する場合のポイント
レトロ着物を購入する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 状態のチェック: 特にアンティーク着物の場合は、生地の傷みや色褪せがないかチェックしましょう。
- 素材とお手入れ: こちらも主にアンティーク着物の場合、素材によっては特別なお手入れが必要な場合があります。購入した後で保管場所に困るようなことがないか、事前にメンテナンス方法などと合わせて確認しておきましょう。
- 着用予定の確認: そのレトロ着物を将来何度も着る予定が本当にあるのか、デザインが好みだから、記念のものだからと衝動的に購入しようとしていないか、冷静になって考えてみましょう。
レトロ着物を着用する際はこうしたポイントを踏まえ、自分の生活環境や計画に基づいた無駄のない選択をしましょう。レンタルでも購入でも、レトロ着物を通じて日本の伝統文化をより深く楽しむことができることには変わりありません。
まとめ
レトロ着物やアンティーク着物を身に纏うことは、ただのファッションという枠を超え、日本の豊かな文化遺産への深い敬意と愛情を示す行為でもあります。こうした着物は必ずしも人生における特別な日だけでなく、日常生活にも古き良き日本の美しさを取り入れる機会となってくれるものです。
この記事のまとめとして、レトロ着物を存分に楽しむためのポイント、アンティーク着物を使って日常に色彩を加える方法などについてお話しします。
レトロ着物を楽しむためのポイント
レトロ着物を楽しむにあたり、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 知識の習得: 着物や帯の種類、素材に関する知識は、適切な着物選びを行う上で決して無駄にはなりません。着物ごとの着用シーンや素材ごとの特徴を学んでおきましょう。
- 和装小物で差をつける: 帯留めや帯締め、バッグの和装小物の取り入れ方次第で、同じレトロ着物でも全く異なる印象を楽しむことができます。
アンティーク着物で日常に彩りを
アンティーク着物はその歴史的価値と独特の風合いで、日常をちょっと特別なものに変えてくれる力を持っています。
散歩や買い物など、日常のさまざまなシーンにも気軽にアンティーク着物を着用してみましょう。アンティーク着物を生活の中に取り入れてみることで、日常の中にも特別感を演出できます。
次のステップへ
レトロ着物との出会いは、ご自身にとっても日本の伝統文化への理解を深める貴重な機会となるものです。着物への愛情を深めることができたら、次は自分で着物に関連するイベントを開催する、着物愛好家のコミュニティに参加する、着物のリメイクや手入れの技術を学ぶなどのステップが待っています。
着物を通じて新たな発見や出会いを楽しみ、日本の美をさらに広めていくことだってできるかもしれません。
〈参考記事〉
https://ewha-yifu.com/situations/gion-retro-kimono/
https://ewha-yifu.com/situations/gion-antique-kimono/
https://cafe-kimono.com/アンティーク着物とは?柄や生地の特徴/